【MRO Japan】高橋隆司社長に聞く、機体整備工場見学について。

5月16日(月)から始まった沖縄・那覇空港にある MRO Japan の機体整備工場ツアー。初日から格納庫内での整備作業を熱心な眼差しで見学する参加者の姿が見られた。

機体整備工場ツアー自体は羽田空港で実施されている例はあるにしても、MRO Japan の場合は今まで非公開である上にその内部に関してはヴェールに包まれている感覚に近いものがあった。

2015年のMRO Japan 設立時の立ち上げメンバーでもあったMRO Japan の高橋隆司代表取締役社長に、今回の機体整備工場ツアーについて、そしてMRO Japanとは、整備士とはなどの話題に加えて、沖縄で果たすべき使命感も含めた将来ビジョンについてお話を聞く機会を得たので、お伝えしたい。

2015年6月に設立されたMRO Japanは、2019年1月に大阪・伊丹空港から沖縄・那覇空港に移転した。
[写真 : FUKAZAWA Akira]

5月16日(月)から、地域創生や沖縄へのお客様誘致を軸として活動しているANAあきんどと組んで機体整備工場見学ツアーを開始したMRO Japanだが、高橋社長は3つの目的を挙げた。

  1. 沖縄県への地域貢献
  2. 航空整備事業の認知度向上
  3. 航空機の安全意識の啓蒙

1.沖縄県への地域貢献について

上の写真のようにMRO Japanの格納庫は巨大だ。横幅はおよそ190メートルに及ぶ。

向かって右側が大型機格納庫(No.1 Dock)で7692.1㎡の面積があり塗装作業対応も可能。現在日本の空で活躍しており人気のANA「鬼滅の刃」じぇっと 壱 、「鬼滅の刃」じぇっと 弐の両機、AIRDO「ロコンジェット北海道」なども、この格納庫で塗装作業が行われた。向かって左側は小型機格納庫(No.2 / No.3 Dock)で7594.2㎡の面積がある。

実はこの格納庫、沖縄県の2030年までの将来像をまとめた基本指針「沖縄21 世紀ビジョン」における「沖縄県航空関連事業クラスター形成」アクションプランの一つとして県が建築したもので、MRO Japanは賃貸契約で利用している。

MRO Japanとしては「沖縄県航空関連事業クラスター形成」の核となって沖縄県における航空関連事業の発展に寄与するとともに、沖縄への地域貢献の一つして「機体整備工場見学ツアー」を実施する形だ。

「沖縄へ移転して4年目で黒字化も達成し、累損も解消できたこのタイミング。つまり会社が安定したこのタイミングで機体整備工場見学ツアーを開始しました」(高橋社長)。

2.航空整備事業に認知度向上について

「まだまだ航空整備に対する認知度は高くない」と訴える高橋社長。採用にも大きく影響することから「この機体整備工場見学ツアーによる見学を通じて航空整備の様子を間近で見て、関心を持ってもらいたい」。

3.航空機の安全意識の啓蒙

「部品を取り外して隅々まで整備作業をしている光景を見学してもらうことによって、より安心して航空機に乗ってもらえるようになれば」と、見学してくださる人たちの中での航空機への安全意識の啓蒙を3つ目に掲げた。

「細かな整備作業を間近で見てもらうことによって、航空整備に対する関心を持ってもらうのと同時に、より安心して航空機に乗ってもらえれば」と高橋社長。これほど至近距離で見学できるのはとても魅力的。[写真 : FUKAZAWA Akira]

高橋社長は1989年4月にANAに入社後、2011年4月に同社の整備本部企画推進部 企画チーム リーダーとして、MRO Japanの構想段階から関わっている。MRO Japanが設立されて航空機整備事業を開始した2015年9月にANAからMRO Japanに出向され、日本ならではの高い品質と技術力(Japan Quality)で、MRO事業の発展に尽力された。2019年にはANAへ整備センター機体事業室 機体計画部 部長として帰任。そして、2022年4月1日付でMRO Japanの代表取締役社長に就任された。

高橋社長はこうした経歴からMRO Japanに対して並々ならぬ思い入れがある。また、沖縄県への地域貢献への思いも強く、MRO Japanが「沖縄県航空関連事業クラスター形成」の核となり、今後は物流センターやエンジン工場の誘致など「実現までには長期スパンが必要かもしれないが、しっかりと取り組んでいきたい」と将来ビジョンも鮮明だ。

また、MRO Japanに入社したいわゆるプロパーの整備士の技術力向上にも力を注いでおり、「2021年に1名、プロパーの一等航空整備士が誕生しました」と嬉しそうに語った。2022年の現在もまさに一等航空整備士への試験を数名受験中とのこと。

こうした確かな技術力と、沖縄という地理的優位性。つまり、整備対象の大多数を占める小型旅客機の航続距離から考慮すると、シンガポールあたりまではダイレクトでフライトが可能であるために、「今後は海外エアラインにも積極的にMRO事業を売り込んでいきたい」という姿勢も示した。

MRO Japanの構想段階から関わられている高橋隆司社長。「沖縄県航空関連事業クラスター形成」の核となることを念頭に今後のビジョンを語った。[写真 : FUKAZAWA Akira]

最後に、どんな人が整備士に向けているか、を高橋社長に聞いてみた。

まずは飛行機が好きであること」と即答。

航空整備士は機種ごとにライセンスが必要で(それは運航乗務員も同じだが)、整備士でいる以上ずっと勉強が続く。そのため根底に「飛行機が好き」であることはとても重要。

次に「正直であること」。

担当した整備内容に対して少しでも不安があった場合には、その不安材料を正直に言える人。

逆に「正直に言いやすい環境を作ることも私の仕事です」と整備の世界の先輩として、整備士たちに暖かい眼差しを送る。

そして、この機体整備工場見学ツアーで人から作業風景を見られることによって、普段通りに仕事をしつつも、挨拶であったり、基本中の基本を大切にすることをより整備士たちが意識してくれればと、対内的な相乗効果にも期待を寄せている。

50年にわたりANAグループの整備部門を支えた英知、技術力のDNAを継承するMRO Japanの高い品質の一端を
是非この機体整備工場見学ツアーで目撃しよう。[写真 : FUKAZAWA Akira]

MRO Japanの機体整備工場見学ツアーは2022年7月29日(金)までの平日(※土・日・祝日を除く)に開催されている。

詳しくはこちらのウェブサイトから https://www.ana.co.jp/ja/jp/domtour/theme/mro_japan/

なお、高橋社長は今回のツアー実績結果などを検証して、今後も機体整備工場見学ツアーを開催する可能性にも言及している。

この機体整備工場見学ツアーを沖縄への旅の「核」にする。そんな旅模様もきっと楽しく有意義なものとなるのではないだろうか。

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