MRO Japanは沖縄で航空機の整備をしている会社だ。2015年に設立され、2019年に伊丹空港からここ沖縄 (那覇空港) に拠点を移した。MROとは、Maintenance(整備)、Repair(修理)、Overhaul(オーバーホール)の略。航空機の整備及び修理に関わる事業を展開、ドック整備を事業の柱としており、C整備や構造修理、エンジンやランディングギアなどの装備品交換、機体の塗装作業(リペイントや特別塗装)などを行っている。
本企画では、「沖縄から、世界へ。空を支える力を。」をコンセプトに今後益々その存在意義が増してくるであろうMRO Japanで働く人にクローズアップ。沖縄・那覇空港を拠点とする〝 MRO Japan で働くということ〟を深掘りする。
高校では工業科で学ぶも「航空機にはあまり興味はなかった」と語る宜間 直樹(ぎま なおき)さんは機体の構造修理作業をメインとする構造整備部構造整備課に所属している。高校卒業前の会社説明会でMRO Japanが伊丹空港から地元沖縄の那覇空港に移転することを知り、興味を抱いたという。現在5年目のプロパー3期生として活躍しており、同期は18名だ。3期生同士は特に仲が良いそうだが、MRO Japanの社内の雰囲気は明るく楽しいと語る。
日々の作業としてはWi-Fiアンテナを取り付けたり、バードストライクなどによって受けた機体のダメージを修復したりしている。また、機体整備を担当している機体整備課が実施するインスペクションで発見した不具合などの修理作業を行っている。
「沖縄で整備士として働く意味はなに?」
とインタビュー早々核心をつく質問をしてみた。
「沖縄で整備士として働くとなると、日本トランスオーシャン航空(JTA)以外にはあまり身近にはいないイメージですが、沖縄を拠点とするMRO Japanで高校卒業後すぐに航空整備に携われることはすごいことだと思います」
と、優しい眼差しをこちらへ向けながらゆっくりと真摯に答えてくれた。
これにはMRO Japanの高卒人材への積極的な採用姿勢も大きく作用している。整備士になるために航空系専門学校へ行くか大学へ行くか迷っているぐらいなら
『MRO Japanにおいでよ!
しっかり教えるから!!』という心意気だ。
『3度の飯より機械いじりが好きか?』
『一緒に汗を流せるのであれば』
整備士として育て上げていく土壌がMRO Japanにはある。
航空機の整備作業はマニュアル通りに行うのが鉄則だ。その上で「その作業が最終工程になったときを考ええて、どういった順番で作業したら良いか、先輩にしっかりと聞いています」と宜間さん。こうした先輩との日々のやり取りを通じて「考えの幅が大きく広がった」という。また、MRO Japanの心得にもある「失敗しても嘘はつかない」というのも整備士の気質として必要だということも感じている。
ちなみにMRO Japanの心得には5ヶ条がある。
1. どんな時でも作業安全が最優先
– 生産も大事だが作業安全はもっと大事!仕事が遅れていても、めんどくさくても作業安全を最優先!
2. 迷ったときは作業を止める勇気を
– 準拠かはっきりしない状態で作業を進めない!工程が気になっても急がば回れ!MJPはまごころ込めたJAPAN品質で勝負する!
3. 失敗しても嘘はつかない
– 失敗しても、恥をかいても嘘はつかない!
4. 社会人として「ルール」を守る
– 法律を守る!飲酒のルールを守る!ハラスメントをしない!それが自分を守り会社を救う。
5. いちゃりばちょーでー 挨拶からはじめよう!
声掛け・気配りをできる関係が、あかるく元気な会社を作る!
※いちゃりばちょーでー 一度あったら皆兄弟。仲間を大切に、信頼しながら付き合っていく。島人の心を表した言葉。
堅実な整備作業で顧客エアラインから絶大なる信頼を得ているMRO Japanだが、危機感がないわけではない。
日本における航空機整備MRO(Maintenance、Repair、Overhaul)事業は、空港に隣接していること、広大な敷地面性を必要とすること、格納庫の建設や整備作業に必要な付帯設備導入などにおけるイニシャルコストと事業運営費用に高額な資金力を必要とするため、新規参入は極めて困難であり、エアラインによっては整備関連費用を低減させるために廉価な海外MROに重整備を委託せざるを得ない状況となっている。
そういった中でMRO Japanは、国際物流拠点産業集積地性制度を利用して設備投資費用の抑制を図ることができたこと。さらに沖縄は数々のエアラインの就航先として位置付けられており、整備のための空輸費用が抑制できるなど、海外MROに対抗できるだけのポテンシャルが高い。
その裏付けとして2022年度、9月にはスカイマークと航空機に関する整備基本契約を締結。10月にはスカイマーク機の初回重整備を実施している。また、同じく10月には欧州航空安全庁(EASA)の認定を取得、さらにスターラックス航空の運航整備業務を受託するなど事業の拡大が進んでいる。
「いろいろなエアラインの機体を触れるなど、仕事の幅が広がっていくことは、とても嬉しいことです」と宜間さん。それと同時に「さらに仕事の責任が増してゆくプレッシャーも感じている」としながらも、キリッと目元を引き締めて、未来を見据えている姿が頼もしい。
勤務は4勤2休で朝8時出社の17時退社が基本だ。休みの日が土日、というわけにはいかないが「休日に恋人と過ごすのが楽しい」と笑う。恋人の影響もあり、「最近は小籠包が好きです!」と明るく語ってくれた。
高校生の頃には特に興味のなかった航空機。その航空機を前にして完全なるプロフェッショナルの目になっていた宜間さん。物流も含めて那覇空港において航空整備の一大拠点を担ってゆくという将来ビジョンを持つMRO Japan。そのMRO Japanの明るい未来は、宜間さんのようなピュアで誠実な整備士たちが、その道筋を創造してゆくことだろう。