【ANA WINGS】〈独自取材〉- ANAウイングス – Pride 5

– ANAウイングス – Pride第5弾は、航空整備士の林 拓央(はやし たくお)さんです。

林さんはDHC8-Q400とボーイング787の2機種について、一等航空整備士の資格を取得しており、大阪国際空港(伊丹)でライン整備士として活躍されています。

また、 ANAウイングスへ入社しておりますがANAラインメンテナンステクニクス(株)に出向しています。

《現在ANAウイングスの現場の整備士はすべてANAラインメンテナンステクニクス(株)に出向となっています》

それでは林さんのライン整備士としての日々に迫ります。


〈独自取材〉- ANAウイングス – Pride 5

林さんは高校卒業後、岐阜県関市にある航空系専門学校の中日本航空専門学校へ進学。そこで2等航空整備士の資格を取得。2009年4月、ANAウイングスへ入社した。

2015年9月以降、ANAウイングスの現場の整備士はANAラインメンテナンステクニクス(株)に出向となった。

ライン整備とは主にどういう業務をするのでしょうか。

「朝、まずは飛行機の電源を入れてシステム系や機体などに不具合がないかチェックします」と林さん。

その後は便と便の間に不具合があった場合に修理が必要かの判断をしたり、キャビン内のシートが汚れてしまった時にはシートカバーを交換したりするという。

また、夜間に定例点検をしたり、必要に応じてパーツやタイヤ交換をしたり。

「ただし、いまはすべて便に張り付いてチェックをすることはなく、不具合があった場合や判断が必要な場合に呼ばれるので、呼ばれたらその機に駆けつける感じです」。

ということは、普段はどこかの部屋で待機して、、、、

「いやいや、そんなことはありません。いつ呼ばれても良いように、ランプ内を巡回しています」。

実際呼ばれる頻度は高いという。

「すべてが要修理というわけではありませんが、最終的に運航の可否は機長が判断されます。そのための整備士としての見解をしっかりと伝えます」。

林さんは現在ANAウイングス便のDHC8-Q400だけでなく、ANA便として運航しているボーイング787のライン整備も行なっている。Q400は2014年に、ボーイング787は2019年に一等航空整備士の国家資格を取得している。

「ANAウイングスに入社した時は、まさか自分が将来ボーイング787の一等航空整備士資格を取得するとは夢にも思わなかったです」と笑う。

日々の業務で気をつけていることは何か聞いてみた。

手先が器用な林さん。Q400のプロペラを外す作業もコツを掴んでおり、比較的早く終了することができるなど、限られた時間内で解決しなければならない状況の整備を任されると「やりがいを感じる」という。

ただし、整備の現場はすべてにおいてチームワークが大切であり、通常で2〜3人、多い時には5〜6人での作業となるため

「自分の力を過信し過ぎないこと。一人で突っ走らないこと」と語る。

国家資格とは別にANAグループの社内資格として、グレード1、グレード2、グレード3の3段階があるという。

グレード1はキャビン内や簡単な外部作業など。

グレード2は一等航空整備士の国家資格取得者で、必要な整備作業の大半を実施可能。

では、グレード3は?

「エンジン交換やフライトコントロール系の舵面交換など、重要作業まで実施できます」と林さん。

本来一等航空整備士の国家資格取得者であればグレード3の内容まで実施可能だが、ANAグループではあえて社内資格としてそこを明確を分けている。

林さんは現在、Q400のグレード3を目指している最中だ。

まさに〝グレード3はグレート整備士〟といったところだろう。

しかも、林さんは同時にエアバスA320の一等航空整備士資格取得ヘ向けても日々勉強している。

「整備士は一生勉強とよく言われますけれど、、、本当です!」。

ところで、整備士としての立場として思うANAウイングスプライドとは。

「ANAウイングスはQ400とB737という小型機のオペレーションに特化したエアラインです」

その中でいかに運航品質を上げていくか。

ANAウイングスは北から南まで生活路線として、利用者から1便1便に対する期待値が高い路線が多いのが特徴の一つだ。

だからこそ

「便を切らすわけにはいかない」

「不具合を直し切る」

という想いには並々ならぬものがあるという。

ただし、先ほども触れたように一人では突っ走らず、関係部署と相談をしながら慎重に判断、作業する。

熱い想いと冷静さと丁寧さ。

このバランスがうまく保たれているのだろう。

当たり前のことではあるが、要修理の判断などは個人的感覚で行われているわけではなく、マニュアルで定められている数値的根拠があり、優先順位の付け方まで定められている。

その一定条件の中で、いかに素早く判断し、修理を実施し、定時運航を支えるか。

そして、夜のうちに必要な整備作業が終わり、翌日の運航が通常通り実施できた時には

「この仕事をしていて良かった」と心から感じるという。

出発機に向かって手を振る姿に憧れてライン整備士になった林さん。

「これからも整備の現場でずっとやっていきたい」と語る。

エアバスA320の一等航空整備士国家資格取得を目指す日々だが

「機種もどんどん増やしていきたい」

と意欲的だ。

勉強はそれほど好きではない、と謙遜するが

2機種で一等航空整備士資格を取得し、さらにもう1機の取得を目指すというのは生半可な姿勢で臨めるものではない。

元気一杯の35歳!これからのANAグループを支えていくに相応しい真面目で誠実な林さんでした。


Q400の一等航空整備士になると、就航先空港への出張も多い。

「整備道具は各空港にあるので、つなぎと靴を持ってデットヘッドで自社便に搭乗して行きます」。

仕事はきっちりやって、そのあとは土地土地の美味しいものを食べて、さらに元気になってまた仕事に励んで。

今日も元気にたくさんのANAグループ便を見送っていることだろう。

[取材 撮影 文 : 深澤 明 (Ace Photographer inc.) ]

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