ANAグループ・ANAブランドのエアラインとして、北海道から沖縄に至るまで国内47空港を、DHC8-Q400とボーイング737-800で結んでいるANAウイングス。2020年10月に会社設立10年目を迎え、いまやANAブランドの50%を超える路線を運航しています。小型機の特性を活かして地方路線には欠かせない存在であり、観光路線としてだけでなく生活路線として大都市から離島に至るまで、重要な公共交通機関としての責務を日々果たし続けています。
ところが、ANA便として運航されていることもあり〝ANAウイングス〟という会社の存在自体、失礼を承知で書けばあまり認識されていない面は否めないのが実状です。
ANAウイングスは会社設立12年ということもあり、若くて元気な社員の皆さんが日夜日本の空で躍動されています。そこでAviation Picksでは – ANA ウイングス – Pride と題しまして、ANAウイングスの社員の皆さんがどういう想いを抱きながらどのような業務をされているのか。5回にわたってクローズアップしていきます。
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〈独自取材〉- ANA ウイングス – Pride 1
ANAウイングス 客室部関西客室乗務室所属の客室乗務員、河本実希(かわもと みき)さんからスタートです。
風が冷たい寒い日だった。伊丹空港のターミナルビルからランプ内へ移動すべく、外を歩いた。
この取材のあと4レグの乗務が控えている客室乗務員の河本実希さんに
「寒いなかごめんなさいね」
と歩きながら声をかけた。
マスク越しでもその明るくはじける笑顔が伝わる表情で
「大丈夫です!」
と答えてくれた。
普段とは違う動線でヒコーキのそばまで行けることが楽しみでワクワクしているという。この状況を前向きに捉えてくれており、ヒコーキが好きなことも伝わってきた。
河本さんは小さい頃からクラシックバレエをされていて、英語専攻の大学時代でも4年間続け、クラシックバレエの講師もされていたという。どうりで立ち姿も歩く姿勢も良いわけだ。
「バレリーナとして生きていくか、社会人になるか」
の選択をしたという。
そんな中、就活における自己分析を行ったところ、接客業に向いていることがわかり、企業研究を進めていくうちに就職先候補をエアラインに絞っていったそうだ。
クラシックバレエで培った体力や体幹の強さ、気力なども日々の乗務の中で活かせそうなのは想像に難くないが、気流の乱れなどで揺れることも少なくない。しかしながら、
「気持ち悪くなったりしたことがないんです」
と笑う。
「おそらく三半規管が強いんだと思います」
と河本さんの声はどこまでも明るい。
「この仕事が楽しいです!」
と明言する。
客室乗務員は搭乗者に対する接客がメインではなく、あくまでもヒコーキにおける保安要員として乗務している。いざという時、いつでも大きな声で機敏に動けるように体調を整えており、そのためにも
「よく寝て、よく食べてます」
とこれまたはじけんばかりの笑顔で語ってくれた。
コロナ禍に入ってからは手洗いうがい、手指消毒の徹底はもちろんのこと、免疫力を高める食材を摂るようにしているそうで
「キムチ納豆はよく食べてます(笑)」。
休日は、前の晩に早めに寝て朝早くから起きて行動されているそうで、ご家族とおしゃべりしたりごはんを作ったり、最近では自転車に乗ったりしてリフレッシュしているという。
そんな元気いっぱいの河本さんに、ANAウイングス運航路線ならではの特徴を聞いてみた。
地方路線が多いこともあり
「アットホームな雰囲気はあると思います」。
特に伊丹 – 高知線は、高知に行く搭乗者も、高知から乗る地元の人たちも明るい雰囲気の方が多いらしく、気さくに話しかけてくださる場面が多いそうだ。
人と会話をすることが大好きという河本さんは、ステイ先としても高知が大好きなんだそうで〝ひろめ市場〟などへ行くと活気が溢れていて、乗務で多少疲れていても元気がもらえるという。
北海道内路線などでは、医者が搭乗するケースや患者が搭乗するケースなども多く、中には
「今日いまから病院に行くんです」
なんていうことあるそうで、まさに公共交通機関として責任ある役割を担っている、と実感している。
ANAウイングスが運航しているDHC8-Q400にせよボーイング737-800にせよ単通路なので、搭乗者一人ひとりとアイコンタクトがとれるだけでなく
「窓側のお客さまからのニーズキャッチもしやすい」
というのも特徴といえるという。
そして、今回の取材のメインテーマである「- ANA ウイングス – Pride」について。
ANAウイングスの一員として日々業務に従事している河本さんのプライドや使命感について聞いてみた。
DHC8-Q400は客室乗務員2名乗務ということで、いろいろな意味でマンパワーの必要性を感じている河本さん。
「各シートに個人用モニターがあるわけではないですし、Q400の機内ではインターネット接続ができるわけではないのでお客さまと適度な距離は保ちつつも、カメラで機外の写真を撮られている人にはお声がけしたりしてヒコーキの話やプロペラ機ならではの良さを話したりしています」
と、搭乗者とのコミュニケーションも忘れない。
プロペラ機の良さとしては、巡航高度がジェット旅客機に比べると相対的に低いので
「伊丹から東北方面へ向かう路線は富士山が本当に綺麗に見えるんですよ」と嬉しそうに語ってくれた。
中には「この前、JA51ANのスターアライアンス塗装機に乗りましたよ!」と話ししてくれるお客さまとヒコーキの話で盛り上がり、降機の際「ヒコーキのお話ができて嬉しかった」と言ってもらったことも。
ちなみにJA51ANとは機体登録番号のことで、ボーイング737-800のうちの1機だ。〝JA51AN〟というワードだけで客室乗務員と話が盛り上がったら、さぞかし嬉しかったことだろう。
どうすればお客さまに悦んでもらえるか。充実したフライトになるか。リラックスしてもらえるかを常に考えて日々乗務しているのが河本さんの仕事へのプライドであり、姿勢がよく表れている。
ANAウイングスの社員は若い人が多く、元気で明るくてとても楽しく仕事ができているという河本さん。
その日その日で組む客室乗務員が変わるし、初めましての客室乗務員と組むことの方が多いそうだが
「伊丹ベースの皆さんは皆さん優しい方が多く、初めましてでも5分もすればいっぱいしゃべってます」
と笑う。
ブリーフィングなどでも稀に認識の不一致があったとしても「?」と思ったらすぐに言える環境だそうで
「言って怒られたり嗜められたりしたらどうしよう、、、」
という雰囲気は皆無だという。
「そこはとてもありがたいと思っています」
とイキイキ仕事に励めている様子が窺える。
また、ANAウイングスの運航乗務員も優しく穏やかな方が多いという。
お客さまのことを一緒に考えてくれているため
「何名様のご搭乗だから何分くらいのサービス時間が欲しいです」
などの打ち合わせも細かく行い、客室乗務員側の意見も聞いてくれるそうで
「とても嬉しいし、一緒に飛んでいて一体感も生まれます」と目を輝かせる。
最後に、航空業界で働く人に多く見られる気質は何か感じているか、聞いてみた。
「元気で明るくて、人との会話が好きな人が多い印象です」
と語る。
この取材を通じて河本さんに人間力の高さは十二分に感じてはいたが
『それはまさに河本さんのことではないですか!!』
と自然と言葉に出てしまった。
「例え会話が苦手な人でも、周りが引き出してくれる雰囲気がANAウイングスにはあります」
と河本さんは謙遜していたが、ANAグループが掲げるスローガン
〝あんしん、あったか、あかるく元気!〟
そのものだった河本さん。
イキイキと乗務されている河本さんに機内でお会いできたら、きっと皆さんも元気になるだろうなと思いながら、伊丹空港を後にした。
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– ANA ウイングス – Pride 1 客室乗務員の河本実希さん、いかがでしたか?
入社2年半とはいえ人間力の高い〝プロフェッショナル〟な気質をヒシヒシと感じました。
そして、話をしているこちらの気分も明るく清々しい気分にさせる雰囲気や声、そして表情。
コロナ禍で一度沈んでしまった航空業界の機運を、コロナ禍以前よりも飛躍させていくチカラを、河本さんはじめANAウイングスの皆さんが持っているのでしょう。
それが、若くて元気、というキーワードにも表れているように思います。
さて、次回はANAウイングスの総合職掌事務職、客室部乗務サポート課所属の小山友実さんをクローズアップいたします。お楽しみに!
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