JALは、ワーケーションなどの新たなワークスタイル変革の推進と地域課題の解決に力を注いでいるが、社会におけるワーケーションの浸透加速を目的として2022年2月、企業や自治体と共創型コミュニティ「ワークスタイル研究会」を発足させていた。
そして、2022年5月19日に、栃木県日光市の鬼怒川温泉にて「ワークスタイル研究会」のキックオフイベントを開催した。会場となったのは鬼怒川グランドホテル 夢の季 の宴会場。「ワークスタイル変革に取り組む民間企業の課題」や「日光市の地域課題」などをテーマとした講演やパネルディスカッションが行われた。
午前10時から開始され、観光庁観光地域振興部 観光資源課長 星 明彦氏が「官民連携によるワーケーション推進に期待する共創のあり方」をテーマに基調講演を行った。
「ワーケーション」という言葉の意味から始まり、会社などでの社会的肩書きを捨てて伸び伸びとかつ生き生きと自信も持つことで本来の力を発揮するための「第3の場」、というワーケーションをする中で本来あるべき姿を具体的なエビデンスと共に提示、キックオフイベント参加者へ国としての指針を示す形となった。
また、「街」「宿」「移動手段」それぞれの意味があり、課題があるとして現状の問題点を指摘。「観光案内所」よりも「(地域との)関係案内所」が欲しいと問題提起。地域の売り(エゴ)を押しつけているだけの現状を嘆きつつ「その人の潜在意識に応えるものを作ってほしい」と方向性を示した。
続いて「ワークスタイル研究会」の運営側として、JALのアシスタントマネージャー東原祥匡氏が「人事担当者による制度導入サポート講座」と題して講演した。
ワーケーションの魅力として、企業のとっては時間と場所に捉われない、柔軟性のある働き方の推進。個人やチームとしてはいつもと異なる環境と経験で自己成長、そして新たな活力になること。社会にとっては地域活性化へも繋がる新たなワークスタイルの確立を掲げた。
ワーケーションの好事例の共有から社会全体へ浸透していくことを進むべき道として示し、「ワークスタイル研究会」の意義を改めて確認する意味も込めた。
続いて前出の二人に加えて自治体側から、栃木県日光市 企画総務課 部長 小林岳英氏、会場となった鬼怒川グランドホテル 夢の季 代表取締役社長 波木恵美氏、さらに会員参加者全員でパネルディスカッションを実施。「研究会の本格的な活動開始にあたって」というテーマでやりとりを行った。
人口減少に歯止めがかからず過疎指定地域が増えた日光市の課題や、グループ団体旅行主体だった鬼怒川温泉の需要が個人旅行へシフトしている現状から見えてくる課題などが示された。
また、参加企業の担当者からも人事制度としてワーケーションを掲げていても拭えない会社内のワーケーションに対するネガティブ感情の存在や、いまだに制度化への問題点を探っている状態であることなど、赤裸々に語り合う場面もあった。
この取材を通じて見えてきたものは、「ワーケーション」という新しい働き方を企業側も社員側もまだまだ本当の意味で理解できていない側面が否めない点と、「そうは言っても、、、」と実施できない理由が先に立つ現状は浮き彫りになっていた。
さらにそもそも論ではあるが「何故 JAL が就航していない(空港すら存在していない)栃木県日光市」において、ワーケーションをテーマにイベントを開催しているのか。
そこは「ワークスタイル研究会」の設立目的にあるように、ワーケーションを軸とした新しい働き方の普及・推進による「企業価値向上」・「地域活性化」およびSDGs の達成を目指す、という大きなテーマに立ち向かっていることに他ならない。
今後も「ワークスタイル研究会」 には注目していきたい。
【ワークスタイル研究会】組織概要
設立時期 : 2021年12月設立、2022年2月発足
設立目的 : ワーケーションを軸とした新しい働き方の普及・推進による「企業価値向上」・「地域活性化」およびSDGs の達成を目指す
運営事務局 : 日本航空株式会社
活動内容 : 専用Web サイトを通じた企業・自治体による双方向のコミュニケーション / 自治体と組んだモニターツアーの実施 / 説明会などの制度導入に関する取り組みなど
参加会員数 : 合計26 団体(企業 : 12、自治体 : 14)※2022年5月15日時点
会費 : 無料 ※各活動への参加にて費用発生の場合あり