2023年3月23日15時からJAL本社のある野村不動産天王洲ビルにて行われた、JALの社長定例会見に行ってきました。その様子をレポートいたします。
冒頭、JALの赤坂祐二代表取締役社長は日本中に明るい話題を、そして勇気と感動を与えてくれたWBCでの優勝の件に触れ
「弊社のチャーター機で帰国中ですが、そろそろ成田空港へのファイナルアプローチ中かと思います」
と笑いを誘った。
明るい兆しとして、コロナ禍の影響は底を打ち急速に回復傾向となり、国内線はコロナ前と比較して9割、国際線は6割にまで迫ろうとしている現状についても触れました。
さらに、コロナ禍における日本政府、銀行などの金融機関、また各空港からの減免措置などへの謝辞を述べたと同時に、社員の出向を受け入れてくれた自治体や企業への感謝の気持ちにも言及しました。
その上で
「この3年間踏ん張り続けたJAL社員へ心から敬意を表したい」
とJAL社員へのメッセージも忘れなかったのが赤坂社長らしさが溢れていました。
フルサービスキャリア事業の機材戦略
JAL本体の機材戦略として、〝最新の低燃費・低騒音機材の導入促進〟がテーマとしてありますが、大型機のエアバスA350、中型機のボーイング787を中心として、旧機材になっているボーイング767 と737の後継機をどうするのかが課題としてあります。
その中で今回の定例会見で発表されたのが
ボーイング737-8型機の導入(2026年から21機
)です。
JALがボーイングの新モデルを発注するのは18年ぶりです。エンジンはCFMインターナショナル社製のLEAP-1Bを搭載。また最新鋭の翼端であるアドバンスト・テクノロジー・ウイングレットや胴体後部形状などにより、燃料消費量・CO2排出量を約15%削減が可能ということです。
この機材選定については、現在の国際線用のフラッグシップ機材であるボーイング777-300ERからエアバスA350-1000へとリプレイスされることによっても、CO2排出量25%減と試算されています。
これらの機材選定は、JALの中長期計画にも掲げられている2050年 カーボンニュートラルヘ向けてのステップの一つです。
その前段階として
2030年におけるCO2排出量を2019年対比で10%減
数字にして
約200万トンの削減
という目標が掲げられています。
その約200万トンの内訳は
・省燃費機材への更新(ボーイング737-8、エアバスA350-1000)約120万トン削減
・運航の工夫 約10万トン削減
・SAFの活用 約70万トン削減
と示されています。
SAFの調達に関しては、この計画を実行可能にするための必要量に対して
「約6割ほどの調達の目処が立っている」
と赤坂社長が述べ、今後も継続的にSAFの調達課題へも取り組んでいくとしています。
フルサービスキャリアの事業計画
2023年の夏ダイヤから、北米線や東南アジア・オセアニア線の回復が見込まれており、北米線に至っては羽田空港の発着枠の関係から2019年夏ダイヤでは81便/週だったのが、2023年夏ダイヤでは87便/週と107%増になります。
東南アジア・オセアニア線については133便/週だったのが、2023年夏ダイヤでは127便/週と97%の回復です。
一方で、中国路線の復活が果たされていない東アジア路線については196便/週だったのが、2023年夏ダイヤでは110便/週と56%に留まり、ハワイ・グアム線も56便/週だったのが、2023年夏ダイヤでは33便/週と59%です。
欧州に関しては42便/週だったのが33便/週と79%。
合計でいいますと、2019年夏ダイヤでは515便/週だったのが、2023年夏ダイヤでは390便/週となり、全体では76%の便数回復という数字になっています。
国際線の真の復活の一つが、中国便の回復という光の道筋はなんとなく見えていますが、リゾート路線のハワイ線の復活が鈍いのがやや気になるところです。燃料サーチャージや円安など、まだまだ懸念材料がある上に、企業によっては未だ海外渡航が許されていないところもあり、新型コロナウイルス感染症についてが5類相当へと移行した後の動向について注視する必要がありそうです。
LCC事業 ZIPAIRが着実に成長、ネットワークも拡大
2020年からソウル、バンコク、ホノルル。2021年からシンガポール、ロサンゼルス。2022年からサンノゼへと合計6路線にネットワークが拡大しているZIPAIRですが、2023年3月の搭乗率は80%以上と好調です。2022年7月から単月黒字化も果たしており、コロナ禍で貨物輸送からの門出を思い返しますと、社員の皆さんだけでなく取材させていただく私たち側にも感慨深いものがあります。
特に最新路線のサンノゼの好調ぶりには
「私自身、正直驚いている」
と赤坂社長がいうほど。
シリコンバレー関連の需要は見込んでいたものの、サンノゼ発の需要も想像以上に多いそうで、成田を経由して韓国への乗り継ぎ需要があったりと、好材料が多いようです。
使用機材はボーイング787-8で、先日新造機も到着して5機体制になり、ますますの発展が期待されています。
人財戦略
今後の成長を見据えての人財への投資を推進して生産性を向上させていくことを目的として、過去30年で最高水準となった+¥ 7,000のベースアップと+¥ 11,000の初任給アップについても触れられました。
また採用では2023年4月に入社するのはグループ合計で約1,000名で、そのうちの1/3はグランドスタッフであることも明かしました。先ほどの事業計画にもありますように、国際線の回復はまだ途上ですが、中国便が復活した暁には一気に旅客数が増加することが見込まれています。そのために今から万全の体制を整えておくという意味合いが強いようです。
さらに2024年4月入社からは新卒採用の募集も開始されるということで、アフターコロナにおけるJALの成長をしっかりと支えていくための人財への投資、そして募集という流れが、「回復」という大きな意味を持つ2文字をより鮮明に感じさせてくれます。
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苦しかった3年間をバネに、いまJALをはじめ航空業界は復活への歩みをさらに加速しています。
Aviation Picksでは今後もその動き、流れを追い続けていきます。